【旅行記】高雄LRT訪問記 2016年5月 / Visit of Kaohsiung LRT at May 2016

 2016年のゴールデンウィーク、台湾を初めて訪問しました。
その際、台湾史上初の路面電車である高雄のLRTを訪問しましたので、その時の模様を記しておきたいと思います。

 まずは凱旋中華電停から乗車します。世界で二番目の全線架線レスLRTで、軌道も緑化されていて、おまけに線路脇には並木が続いているため、路面電車の線路としては美しいものに仕上がっています。

凱旋中華電停に進入する電車 / A tram arrives to Kaisyuan Jhonghua

凱旋中華電停に進入する電車 / A tram arrives to Kaisyuan Jhonghua

 電停もシンプルながらよくデザインされており、白い柱・屋根と透明な壁がスタイリッシュです。他の電停も基本的にこのデザインになっていますが、地下鉄との乗換駅である前鎮之星は非常に凝ったデザインになっていました。

凱旋中華電停 / Kaisyuan Jhonghua stop

凱旋中華電停 / Kaisyuan Jhonghua stop


電停の発車案内表示 / Passenger information display in tram stop.

電停の発車案内表示 / Passenger information display in tram stop.


 発車案内表示機も一見何気ないデザインですが、電停全体のカラースキームと揃え、枠も薄くてかなり気を遣っていることがわかります。案内表示機だけでなく電停のパーツ一つ一つがこのようにトータルデザインされています。
 それにしても、台湾って街中は看板があふれているし、建物の色や形も色々で都市景観には無頓着な土地柄という印象なのですが、その一方でこのLRTの駅や車両といい、地下鉄駅の出入り口といい、非常にデザインに気を遣っているところもあって、そのギャップが興味深いです。
続きを読む

【本の紹介】路面電車発展史(大賀寿郎著)

●他書にない内容が盛りだくさん
鉄道趣味誌ではあまり名前を見かけない著者、鉄道書の実績が決して多いとは言えない出版社から出る本と言うことで、正直なところ名前に見合った内容になっているのか不安に思いながらの購入だったのですが、不安は否定されました。
従来の鉄道書では詳細な技術や価値について語られる機会の少なかった、PCCカーとタトラカーを軸に、日本の路面電車との関係も記載した本で、他の本にない内容が盛りだくさんです。
続きを読む

【更新案内】都電8500型の走行音を追加しました / [Update Imformation] Sound of Tokyo metropolitan transport bureau’s type 8500 was added.

三ノ輪橋を発車する8500型

三ノ輪橋を発車する8500型


「トラムのひびき」サイトの都電のページに、8500型の走行音を追加しました。
2014年に録音しておいたものです。現在は制御装置の交換により走行音は8800型とほぼ同じになっていますが、この録音は制御装置交換前の走行音です。他都市の車両ではあまり聞かれない独特の走行音がお楽しみ頂けます。
是非お聞き下さい。

I updated “Tram-no-hibiki”. I added the sound of type 8500 of Toden (Tram in Tokyo) Arakawa line.

【車両紹介】プラハ市電の電車たちPart4- タトラT3 / Rolling stock of Prague tram Part4 – Tatra T3

Výstaviště付近を走るタトラT3 / A Tatra T3 near Výstaviště.

Výstaviště付近を走るタトラT3 / A Tatra T3 near Výstaviště.


プラハの市電で圧倒的な最大勢力であるのが、このタトラT3です。
後継車が登場している状況でもなお、673両も在籍(2011年末現在)しており、またプラハ以外の旧共産圏の街にも多数が在籍しています。プラハ向け以外も含めた総生産両数は実に130000両以上に達し、文句なく世界で最も大量に生産された路面電車車両と言うことができます。
1960年から製造され、1990年代までの長きにわたり造られていましたが、プラハ向けには1960年から1989年まで製造されました。
所謂「丸タトラ」と呼ばれる丸みの強い車体が特徴で、少し愛嬌のある好ましいスタイリングに感じられます。おでこには系統番号表示はありますが行先表示機はなく、行先はフロントガラス内にプレートを掲出して示していました。また系統番号表示は、プレートを車外に取り付けてあるものと、表示窓のあるものの2種類が見られました。 続きを読む

【車両紹介】プラハ市電の電車たちPart3- タトラKT8D5 / Rolling stock of Prague tram Part3 – Tatra KT8D5

更新前のタトラKT8D5。Tusarovaにて / A Tatra KT8D5 at Tusarova.

更新前のタトラKT8D5。Tusarovaにて / A Tatra KT8D5 at Tusarova.


タトラKT8D5は、1986年から1990年まで納入された3車体4台車の連接車です。
プラハ以外では、オストラヴァ、ブルノ、コシツェなど主に旧チェコスロバキア国内で姿を見られますが、特異なところでは北朝鮮・平壌向けにもまとまった数が輸出されており、現在でも多数が働いているようです。プラハ市電では46編成が在籍しており、その他に更新工事(後述)を受けなかった車両が市電博物館の保存車として1編成存在します。
続きを読む

【車両紹介】プラハ市電の電車たちPart2- タトラT6A5 / Rolling stock of Prague tram Part2 – Tatra T6A5

5系統で走るタトラT6A5。Tusarovaにて / Tatra T6A5 at Tusarova

5系統で走るタトラT6A5。Tusarovaにて / Tatra T6A5 at Tusarova


タトラT6A5は、1991年から1998年まで製造された車両です。うちプラハ向けには1995年から1997年まで導入されました。すでに東欧革命を経て共産主義政権が倒れた後の導入ですが、共産主義諸国の標準車として有名なタトラカーの系譜をそのまま引き継ぐスタイルとなっています。

T6A5はプラハのほか、チェコのブルノ、オストラヴァ、スロバキアのブラティスラヴァ、コシツェに導入されており、総勢約300両が製造されています。
いわゆる角タトラの世代では他に旧ソ連向けのタトラT6B5(約1100両)、東ドイツ向けのT6A2(約350両)などがありますが、先代のタトラT3(いわゆる丸タトラ)グループの約14000両という製造両数に比べると比較的少数派です。

プラハには148両が在籍(2011年末時点)しており日本的感覚では相当な数ということになりますが、なにしろプラハ市電全体では972両も在籍していますので、私がプラハを訪問した際も相対的に存在感は小さめでした。

車体はタトラT3と同じく一般的な4軸ボギー車で、全長も約15mと日本人にもなじみのあるサイズです。
3扉車という点もタトラT3と同じですが、タトラT3が4枚折戸を装備するのに対しこちらはスイング扉となっています。他都市のタトラT6A5は4枚折り戸になっているものもありますが、プラハでは見かけたT6A5の全てがスイング扉でした。これが納入時からそうなっているのか、後天的な改造によるものなのかは不明です。
制御方式はサイリスタ制御で、モーターは45kW×4機を装備しています。以前の記事でもご紹介したとおり、日本のサイリスタ制御車にはない、極めて珍妙な走行音を発します。車内は1+2配置の前向きシートが並んでおり、私が乗車した範囲ではすべての車両で自動放送も流れていました。

【車両紹介】プラハ市電の電車たちPart1- シュコダ14T / Rolling stock of Prague tram Part1 – ŠKODA 14T

以前の記事で、都市交通博物館に展示されているプラハ市電の旧型電車を取り上げましたが、そのときの来訪(2009年)で現役車両も撮影していますので、折角ですのでそちらも取り上げていこうと思います。
プラハ市電の車種は大きく分けて4車種あり、シュコダ14T、タトラT6A5、タトラKT8D5、タトラT3(以上は新しい順)が現役車両として運行されていました。ほかに、最新型車両としてシュコダ15Tがあり、これは訪問当時プロトタイプ車が試験中でしたが(なお現在は通常運行に供されています)、残念ながら目にすることができませんでしたので、割愛します。

今回より上記4種の車両を新しい順に取り上げていこうと思いますので、まずはシュコダ14Tからご紹介します。

Výstaviště(ヴィスタヴィシチェ)付近を走る14T / 14T tramcar runs near Výstaviště.

Výstaviště(ヴィスタヴィシチェ)付近を走る14T / 14T tramcar runs near Výstaviště.


続きを読む

【音】プラハ市電 タトラT6A5 / [Sound] Prague Tram, Tatra T6A5

【音】プラハ市電 タトラT6A5 Husinecká→Těšnov
[Sound] Prague tram, TatraT6A5, Line5 Husinecká -> Těšnov

5系統で走るタトラT6A5。Tusarovaにて / Tatra T6A5 at Tusarova

5系統で走るタトラT6A5。Tusarovaにて / Tatra T6A5 at Tusarova

いわゆる「角タトラ」のうち、単車型であるT6A5の走行音です。角タトラには様々なバリエーションが存在しますが、連接型のKT4と、単車型ながら旧ソ連諸国向けでやや大柄なT6B5が多数派で、T6A5はチェコとスロバキアの5都市向けに約300両が製造されたのみ(日本の路面電車車両ならば、300両でもとてつもない大量生産ということになりますが、なにしろKT4DやT6B5などは1000両越えですので)となりました。そのうち半数の150両がプラハで活躍しています。
収録はプラハ中心部のHusinecká(フシネツカー)からHlavní nádraží(中央駅)、Masarykovo nádraží(マサリク駅)を経てTěšnov(テシュノ)まで、5系統の電車で行いました(なお、現在の5系統は経路が変更されており、Těšnovは通らなくなっています)。
T6A5はチョッパ制御を採用していますが、走行音は日本のチョッパ制御車とはかなり異なり、加速時こそ日本と同じく「ブー」という音を発するものの、減速時は言葉では表現できない独特の音となっています。日本ではまったく聴かれない音になっていますので、ぜひお聞きください。

【本の紹介】『世界の路面電車ビジュアル図鑑』疑問点・誤記一覧

以前掲載した記事で『世界の路面電車ビジュアル図鑑』を取り上げましたが、読んでいく中で、情報が古い箇所や誤った情報が掲載されている箇所、読者にとって不親切と思われる箇所を多く見つけましたので、備忘録としてここに掲載しておきます。
一応お断りしていますが、以下の表に取り上げたからといって絶対に間違いだというわけではなく、資料や事実の解釈の仕方が私と編著者とで異なったり、そもそも正確な事実そのものが不明であったりした結果、見解が相違してしまったという可能性があります。また内容に疑義がある箇所だけでなく、「このように編集するほうがより読者に親切ではないか」という点も取り上げています。

とはいえ、私はなにぶん浅学菲才の人間ゆえ(ロシアやウクライナ、ルーマニア、南米各国その他、下記の表で触れることができていない部分がどっさりあることが、私の浅学ぶりを証明しています)、下記の内容もまた誤った知識に基づいているという恥ずかしい事態を生じている可能性も大いにありますので、「本ではこう書かれているが本来はこう書くのが正しい」という厳密なものではなく、「このへんがちょっと怪しい、ちょっとわかりにくい」くらいの話に捉えていただければと思います。もちろん、下記のように重箱の隅をつつくような間違いがあるからといって、世界中の路面電車を一冊に集めたという本書の貴重さはまったく薄れるものではなく、類書のない試みであることに変わりはありません。
続きを読む

【写真】プラハ都市交通博物館の車両たち Part3 / [Picture] Trams in Prague public transport museum – Part 3

Part3では、事業用車をご紹介します。中には大変珍しいというか、おかしな車両もあり、ひときわ興味深いものでした。
まずは電気機関車の4072から。1952年製の車両で、モーター出力は2×88.3kWと控えめなものです(まあ路面電車車両の入換用なら十分でしょうが)。Rustonkaの車両工場で使われていました。こういうのも編成で展示してくれているのは嬉しいですね。
OLYMPUS DIGITAL CAMERA
続きを読む