ワルシャワ市電初の100%低床車です。
2007年に導入されたグループを120N、続いて2009年から導入されているグループを120Naと称します。120Naの中には、両運転台となっている車両があり、それは120NaDUOと呼ばれています。
いずれも全長約30mの5連接車で、メーカーはコンスタルからPESA(ペサ)になりました。
月別アーカイブ: 2013年6月
【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:FPS 123N/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : FPS 123N
FPS 123N。Most Poniastowskiego電停付近にて。
A FPS 123N at Most Poniatowskiego.
2006-2007年に導入された車両です。車体の全体的な形状やドア配置にはコンスタル105Naの面影があるように思えるのですが、あまりはっきりした情報がないものの、どうもコンスタル105Naの更新車ではなく、新造のようです。すでに部分低床車(コンスタル116N)も登場していた時期に、なぜ高床車を投入したのか、意図は謎ですが。
製造を行ったのはH. Cegielski – Poznań社で、ワルシャワ市電へはこの形式のみ納入したメーカーです。以前は国鉄(PKP)向けの機関車なども納入していましたが、現在は産業用のエンジンなどの生産が中心のようです。
外観はコンスタル105Nを近代化したようなイメージで、車内もオフホワイト基調の壁・天井に埋め込み型の明るい照明、布張りのシートなど大幅に進化しています。自動放送・車内案内表示装置もあるなど、床の高さ以外は現代的な水準となっています。
制御方式はサイリスタチョッパ制御で、走行音はコンスタル105N2kとほぼ同じです。在籍数は30両にとどまっています。
【本の紹介】スイスの鉄道(JTBキャンブックス)
スイスをはじめとしたヨーロッパの鉄道に造詣の深い著者による、バラエティ豊かなスイスの鉄道を解説した本。
メインは各路線ごとの紹介で、路線ごとに1ページ、または見開き2ページで、写真と短いテキストによって紹介されています。一路線ごとのボリュームはさほど大きくないものの、テキストは単なる沿線紀行ではなく、車窓風景、客層から運行形態、用いられる車両などが記され、急勾配や変わった電化方式など、特筆すべき点があればきちんと取り上げられています。
写真は、教会の尖塔や石造りの建物が並ぶ大都市、切り立った岩山や、周りの風景が映りこむ静かな湖面など、スイスの美しい風景をバックにしたものばかりで、スイスの鉄道の魅力を読者に伝えるに十分な写真群です。単に列車に乗るだけの旅行では、このような風景と列車の取り合わせをカメラに納めるのは不可能で、ロケハン、途中下車、天気待ちなど、乗車だけの場合に比べはるかに多くの時間がかかったことでしょう。スイス全土に広がる掲載路線すべてに対してこのような写真を用意することは、大変な労力がかかったことと推測します。
取り上げられている路線は、スイス国鉄の幹線や日本でも有名な登山鉄道だけでなく、ローカル私鉄も含めたスイス全土の特色ある路線です。1920年製の二軸電車を用いる路線(オルブ・シャヴォルネ鉄道)から、ラックレールの国鉄幹線として知られる国鉄ブリューニック線、変わったところでは苗木園の蒸機遊覧鉄道(シンツナッハ苗木園鉄道)など、日本で知られている以上にスイスの鉄道は多種多彩であることがわかります。
巻末のモノクロページには、スイスの鉄道政策から、車両技術の近年の傾向や形式記号の意味、ラック式鉄道の各方式の解説など、びっしりと情報が詰め込まれています。裏表紙一つ前のページには、代表車種の写真が36種掲載され、最後の最後までこれでもかと言わんばかりの情報量です。
全編、鉄道ファンが気になるツボをしっぱり押さえた解説で、どうしても一般の旅行者向けとなりがちな他のスイス鉄道本とは一線を画した、充実した内容です。
唯一不足を感じるのは路線図が簡単なものしかない点ですが、幸いにも以前ご紹介した『Eisenbahnatlas Schweitz』というイイ本がありますから、あわせて手元に置いておかれれば、本書を読む楽しみは倍加されるでしょう。
ただ残念なことに、2013年現在、本書は新品での入手に難があるようですね。和書では唯一無二の内容ですので、増刷なり新版が出るなりするといいのですが……。