【本の紹介】Tram Atlas Deutschland (ドイツ市電地図)

路面電車大国ドイツの全ての市電について、路線図を収録した本。
路線図はすべて正縮尺の上に描かれたもので、模式図とは違った臨場感が楽しめます。路線図上にはもちろん系統番号も付されていますから、運行系統もわかりますし、無数に存在する電停も完全に表記されています。さらに計画線や休止線も表わされています。
ドイツではベルリン、ケルン、ライプツィヒなど、総延長100kmを超えるようなとてつもなく規模の大きい路面電車網も散見されますが、全て省略無く地図に収められています。
また、ライン・ルール地方やハノーファー、フランクフルト・アム・マインなどには、路面電車なのか地下鉄なのか微妙な鉄道(シュタットバーン)もありますが、それらも漏れなく収録されており、中途半端なところはまったく無い仕上がりです。

各都市とも、路線図のほかに路線延長、運転間隔(これは各都市ともパターンダイヤ化が徹底しているからこそできる表記でしょう)、運用されている車両形式(これは本当に形式だけで、車両解説はありません。事業用車や保存車は省略)などのデータが記載されているほか、写真も少なからず掲載されています。「Atlas」と銘打ってはいるものの、それにとどまらない情報量で、この一冊で路線網はもちろん、それ以外のこともある程度把握できてしまいます。

圧巻はライン・ルール地方の路線図で、デュッセルドルフ、デュイスブルク、オーバーハウゼン、エッセンを経てボーフムまで、複数の都市の市電が融合した巨大路線網が全て描ききられています。一方で、ヴォルタースドルフ、ナウムブルクなど、総延長10kmに満たないごく小規模の路線のページを眺めるのも楽しく、小さな町を二軸電車がとことこ走る光景が目に浮かびます。

本書はドイツ人であるロバート・シュヴァンドル氏によるものですが、当然ながら路線図を楽しむのに語学力は不要ですし、凡例をはじめとしたテキストには全てドイツ語のほか英語も併記されていますので、ドイツ語が理解できなくとも読むのに問題はまったくありません。

※本書に邦題はありません。ドイツ市電地図とは、理解しやすいように便宜的に表記したものです。

【旅行記】ブッコー小鉄道訪問記2010(下)/ Visit of Buckower Kleinbahn in 2010 (Part 3)

折り返しのレールバスで再びミュンヘベルクへ戻ります。
戻りもまた10人足らずの乗客数で、ボックス席を占領してのんびりできます。
と、発車後しばらくして車掌氏がやってきて、ドイツ語でなにやら言ってきます。身振りから察するに、「運転席に来ないかい?」ということのよう。
ならば誘いに乗らない手はありません。お礼を言って運転席へ入ります。
保存鉄道とはいえ、営業運転中の列車の運転席に入るなど生まれて初めての経験。ブッコーの駅で写真を撮っていたのが目に留まったのでしょうか、ありがたいことです。日本だったら到底考えられないことで、こういう寛容さがあるのは羨ましいです。

Waldsieversdorf駅停車中、運転席より / Cab view at Waldsieversdorf station.

Waldsieversdorf駅停車中、運転席より / Cab view at Waldsieversdorf station.


スピードを出してもせいぜい30km/hほどのゆっくりした走行ですが、それでもすぐ目の前を線路が流れてゆく景色は格別です。
線路脇に倒れている架線柱がつい気になってしまいますが。

運転席に座ると、なおのこと5キロの道のりはあっという間。ゆっくり走っているし、運転士氏もボランティアっぽいので、「俺にも運転させてくれ」という言葉が出かかりましたが、出る前にミュンヘベルクに到着です。

ミュンヘベルクに停車中の列車 / Train at Müncheberg station.

ミュンヘベルクに停車中の列車 / Train at Müncheberg station.


ベルリンへの本線ホームから見たブッコー行きホーム / Buckower Kleinbahn Platform. Taken at mainline platform.

ベルリンへの本線ホームから見たブッコー行きホーム / Buckower Kleinbahn Platform. Taken at mainline platform.


ベルリンへの列車に乗って、来た道を戻ります。ポーランドからやってきた国際普通列車は、往路と同じ車両・乗務員でした。

参考:ブッコー小鉄道公式サイト