【本の紹介】ATLAS PRZEWOŹNIKÓW KOLEJOWYCH POLSKI 2011(ポーランド鉄道事業者図鑑)

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●全鉄道事業者を平易な英語で紹介
ポーランドにおける鉄道事業者の全てを、社名のABC順に紹介した本。
ポーランド語・英語が同ボリュームで併記されており、また英語の文章はきわめて平易に書かれていますので、高校生レベルの英語力で十分に読解可能です(流石に鉄道用語だけは高校生レベルではないですが)。

●オープンアクセスによる新規事業者を含め、数々の鉄道事業者を漏れなく取り上げる
ポーランドで鉄道事業者というとまずはPKP(Polskie Koleje Państwowe – 直訳するとポーランド鉄道公社ですが、ガイドブックなどではポーランド国鉄と書かれることが多いようです)が思い浮かびますが、その他にKM(Kolej Masowiecki)やKD(Koleje Dolnośląskie)など、地方ごとのローカル列車を担当する事業者も漏れなく掲載されています(ちなみにKMはワルシャワ周辺、KDはブロツワフ周辺を運行しています)。
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しかし本書では、そういった旅客鉄道事業者をはるかにしのぐ数の貨物鉄道事業者が掲載されています。
PKPの部門であるPKP Cargoも大手事業者として君臨しているものの、それ以外の事業者も数々存在しています。それらは殆どがここ20年ほどの間に営業を開始したものと書かれており、オープンアクセス政策の結果が貨物部門ではより顕著に出ていることが実感できます。
なお、都市交通(地下鉄・市電など)のみを運行する事業者は、本書では取り上げられていませんので念のため。
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【本の紹介】Tram Atlas Deutschland (ドイツ市電地図)

路面電車大国ドイツの全ての市電について、路線図を収録した本。
路線図はすべて正縮尺の上に描かれたもので、模式図とは違った臨場感が楽しめます。路線図上にはもちろん系統番号も付されていますから、運行系統もわかりますし、無数に存在する電停も完全に表記されています。さらに計画線や休止線も表わされています。
ドイツではベルリン、ケルン、ライプツィヒなど、総延長100kmを超えるようなとてつもなく規模の大きい路面電車網も散見されますが、全て省略無く地図に収められています。
また、ライン・ルール地方やハノーファー、フランクフルト・アム・マインなどには、路面電車なのか地下鉄なのか微妙な鉄道(シュタットバーン)もありますが、それらも漏れなく収録されており、中途半端なところはまったく無い仕上がりです。

各都市とも、路線図のほかに路線延長、運転間隔(これは各都市ともパターンダイヤ化が徹底しているからこそできる表記でしょう)、運用されている車両形式(これは本当に形式だけで、車両解説はありません。事業用車や保存車は省略)などのデータが記載されているほか、写真も少なからず掲載されています。「Atlas」と銘打ってはいるものの、それにとどまらない情報量で、この一冊で路線網はもちろん、それ以外のこともある程度把握できてしまいます。

圧巻はライン・ルール地方の路線図で、デュッセルドルフ、デュイスブルク、オーバーハウゼン、エッセンを経てボーフムまで、複数の都市の市電が融合した巨大路線網が全て描ききられています。一方で、ヴォルタースドルフ、ナウムブルクなど、総延長10kmに満たないごく小規模の路線のページを眺めるのも楽しく、小さな町を二軸電車がとことこ走る光景が目に浮かびます。

本書はドイツ人であるロバート・シュヴァンドル氏によるものですが、当然ながら路線図を楽しむのに語学力は不要ですし、凡例をはじめとしたテキストには全てドイツ語のほか英語も併記されていますので、ドイツ語が理解できなくとも読むのに問題はまったくありません。

※本書に邦題はありません。ドイツ市電地図とは、理解しやすいように便宜的に表記したものです。

【本の紹介】世界の路面電車ビジュアル図鑑

●世界中を網羅した驚くべきボリューム
まさに圧倒的なボリュームの本です。世界50カ国400以上の都市の路面電車を紹介するという、おそらくは前代未聞と思われる企画で、これを筆者一人で訪問したというのですから驚くほかありません。
日本で紹介される海外の路面電車というと、LRT先進地域というべき西欧や北アメリカか、日本人でも身近な中国などの電車が多いですが、本書はそれらの国々は当然のこと、旧ソ連やトルコ、中東欧など、馴染みの薄い国々の路面電車も扱われています。
ロシアのマイナー都市や、ウクライナ、ブルガリア、カザフスタンなど、和書はもちろんネット上でも情報の少ない国・都市の電車が多数登場しており(流石に北朝鮮は扱われていませんが……)、これだけ情報の入手が容易になった昨今でも、まだまだ知らない電車がこんなにあるのか!と新鮮な気持ちにさせられます。
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【本の紹介】都市交通の世界史

よくぞ出してくれた!というのが第一の感想です。
内容は、世界の大都市9つの都市交通(バス・路面電車・地下鉄・郊外電車、それから乗合馬車)の発達史と各都市ごとの特色を論じたものです。
取り上げられている都市は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、モスクワ、上海、ソウル、大阪、東京です。

●様々な性質の都市を取り上げる
世界に冠たる大都市であるNY・ロンドン・パリのほか、世界に類を見ない分断都市となったベルリン、資本主義国とはまったく異なる論理で都市計画が進められてきたモスクワ、かつて欧米列強の草刈り場であり近年は新興国の発展を象徴する上海、世界的大都市のひとつでありながら道路交通への依存度が高いソウル、そして大阪・東京と、それぞれ特色ある大都市を選んで取り上げており、偏りなく様々な性質の都市を見せようとする編者の意図が伝わってきます。

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【本の紹介】鉄道車両のデザイン

●デザイナー自らが内幕を語った、画期的な本
近畿車輛のデザイナーであった著者による本。
鉄道ファンのうち多くの方は、車両のデザインに大きな興味を持っていることと思いますが、デザインの出来をああだこうだと語る人は数知れずとも、デザインを行う立場の方が語る情報はこれまで非常に限られていました。

近年では、水戸岡鋭治氏がデザインした車両については、内実が語られることが多くなりました。しかし水戸岡氏に依頼する鉄道会社の多くは、非日常性を求める車両のデザインを依頼するケースが多く(JR九州など例外もありますが)、ビジネスユース中心の長距離列車や、ごく普通の通勤電車などは、一体どういう意図で、どういうプロセスで、何に留意してデザインされるのか語られることは従来殆ど無く、画期的と言ってよい内容だと思います。
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【本の紹介】Das Berliner U- und S-Bahnnetz(ベルリンU・Sバーン路線図)

最初に申し上げておきますが、これからご紹介するのはベルリンの歴史的な鉄道路線図についての本です。
最新版の路線図については、公式サイトをご覧下さい。Sバーン(近郊電車)・Uバーン(地下鉄)いずれの公式サイトでも、鉄道路線図がご覧になれます。トップページからお探しの場合は、「Liniennetz」と書かれたところが路線図ページへのリンクになります。目的別に何種類かありますが、一般的な電車・地下鉄の路線図であれば以下のものがよいでしょう。
http://www.s-bahn-berlin.de/pdf/VBB-Liniennetz.PDF
また市内バスの路線図については、下記のページをご覧下さい。
http://www.fahrinfo-berlin.de/Fahrinfo/bin/query.bin/dn?ujm=1
なおこの地図は印刷に向いた形式(PDFなど)は提供されていません。どうしてもバス路線の入った紙の地図が欲しい場合は、現地で購入するか、またはBVGのオンラインショップから、紙の路線図(冊子タイプなら『Berlin Atlas und mehr』、一枚物なら『Berlin Liniennetz』)を注文するほかありません。

さて、上記のような最新版の路線図だけでは満足できないという、やや普通でない嗜好の方(例えば私とか)には、以下の本はいかがでしょう。


赤色基調の表紙は2007年版、緑色基調の表紙は2013年版です。

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【本の紹介】Atlas Linii Kolejowych Polski(ポーランド鉄道路線地図)

20130613_200636_ポーランド鉄道路線図(自宅)_01_●大ボリュームの鉄道地図
知られざる鉄道大国、ポーランドの鉄道路線を網羅した鉄道地図です。
基本的な内容としては、以前ご紹介した『Eisenbahnatlas Schweiz(スイス鉄道地図)』などと同じく、地図上に鉄道路線を描いてあるものですが、出版社が違うほか、本としてのボリュームは大違いで、厚みは3cmもあります。
どうしてこれほど違うのかといえば、もちろんポーランドの国土が広大であるというのが要因のひとつですが、それ以上に内容が盛り沢山であることが大きな要因です。

●鉄道地図だけではない、充実した内容
ポーランド全土の鉄道路線について、現役の国鉄線だけでなく、ナローゲージ鉄道や工場専用線、廃止路線まで描かれており、地図そのものも充実しています。そればかりでなく、全路線の開業年・廃止年・旅客営業休止年の表や、全駅名索引が掲載されています。
なかでも大きな特徴は、地図で描かれた地域の沿線風景・列車・駅舎の写真が掲載されていることで、地図1ページにつきほぼ写真1ページの割合となっています。鉄道地図を眺めていると、どうしても現地の風景や車両がどんなものか気になってきますが、本書ではわざわざ別の書籍やインターネットを参照しなくても、その場で見ることができます。
また後半には、ポーランドの鉄道信号について表示の意味が解説されているページもあります。ポーランドでは点滅信号が全面的に使われていたり、補助灯が重要な意味を持っていたりと、日本とは表示体系がまったく異なっていることが理解できます。本線の一般的な色灯式信号機だけでなく、腕木式信号機や入換信号まできちんと意味が解説されています。
さらに、優等列車の運行系統図、各路線を最高速度別に色分けした図など、付録的な図も多数収録されています。

なお、ほぼ全ての説明文や判例には英語が付されていますので、ポーランド語が読めなくても内容を理解することが可能です。

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【本の紹介】大分交通別大線(RMライブラリー)

かつて大分と別府を結んでいたインターアーバン、別大電車の本です。
沿線には温泉街あり、県都の繁華な市街地あり、車窓に別府湾が広がる海岸沿いの単線区間ありと、変化に富んだ車窓がある路線で、今でも残っていたらさぞかし楽しい路線だっただろうと思います。あいにく現役時代は知らない私ですが、本書には車両主体のものだけでなく沿線風景も取り入れた写真が多数掲載されており、沿線風景の多彩さは十分に伝わってきます。
また車両陣も個性的で、路面電車としては大柄な全長13m級の電車が日常的に連結運転を行っていたり、定員200人の永久連結車が走っていたり、また路面電車としてはきわめて珍しいM-M’ユニット車や、アルストム型台車を履いた車両があったりと、こちらもやはり、「今残っていたら……」という思いを抱かせるものです。車両は創業時からの全車種が網羅されており、形式写真も不鮮明なものはほとんどなく、全車種掲載されています。

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【本の紹介】スイスの鉄道(JTBキャンブックス)

スイスをはじめとしたヨーロッパの鉄道に造詣の深い著者による、バラエティ豊かなスイスの鉄道を解説した本。
メインは各路線ごとの紹介で、路線ごとに1ページ、または見開き2ページで、写真と短いテキストによって紹介されています。一路線ごとのボリュームはさほど大きくないものの、テキストは単なる沿線紀行ではなく、車窓風景、客層から運行形態、用いられる車両などが記され、急勾配や変わった電化方式など、特筆すべき点があればきちんと取り上げられています。
写真は、教会の尖塔や石造りの建物が並ぶ大都市、切り立った岩山や、周りの風景が映りこむ静かな湖面など、スイスの美しい風景をバックにしたものばかりで、スイスの鉄道の魅力を読者に伝えるに十分な写真群です。単に列車に乗るだけの旅行では、このような風景と列車の取り合わせをカメラに納めるのは不可能で、ロケハン、途中下車、天気待ちなど、乗車だけの場合に比べはるかに多くの時間がかかったことでしょう。スイス全土に広がる掲載路線すべてに対してこのような写真を用意することは、大変な労力がかかったことと推測します。
取り上げられている路線は、スイス国鉄の幹線や日本でも有名な登山鉄道だけでなく、ローカル私鉄も含めたスイス全土の特色ある路線です。1920年製の二軸電車を用いる路線(オルブ・シャヴォルネ鉄道)から、ラックレールの国鉄幹線として知られる国鉄ブリューニック線、変わったところでは苗木園の蒸機遊覧鉄道(シンツナッハ苗木園鉄道)など、日本で知られている以上にスイスの鉄道は多種多彩であることがわかります。
巻末のモノクロページには、スイスの鉄道政策から、車両技術の近年の傾向や形式記号の意味、ラック式鉄道の各方式の解説など、びっしりと情報が詰め込まれています。裏表紙一つ前のページには、代表車種の写真が36種掲載され、最後の最後までこれでもかと言わんばかりの情報量です。
全編、鉄道ファンが気になるツボをしっぱり押さえた解説で、どうしても一般の旅行者向けとなりがちな他のスイス鉄道本とは一線を画した、充実した内容です。
唯一不足を感じるのは路線図が簡単なものしかない点ですが、幸いにも以前ご紹介した『Eisenbahnatlas Schweitz』というイイ本がありますから、あわせて手元に置いておかれれば、本書を読む楽しみは倍加されるでしょう。
ただ残念なことに、2013年現在、本書は新品での入手に難があるようですね。和書では唯一無二の内容ですので、増刷なり新版が出るなりするといいのですが……。

【本の紹介】Eisenbahnatlas Schweitz(スイス鉄道地図帳)

世界有数の鉄道王国のひとつ、スイスの鉄道を完全網羅した鉄道地図。
鉄道地図は世に数あれど、この『Eisenbahnatlas』シリーズの完全網羅っぷりは半端ではありません。
いま存在している国鉄・私鉄の路線はもちろんのこと、路面電車やケーブルカーにリフト、さらに工場専用線の類まで、本当にありとあらゆる鉄道が網羅されています。さらに、廃止された路線についてもきっちり地図上に描かれているうえ、廃止年と事業者名までわかるというものです。

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