【本の紹介】鉄道車両のデザイン

●デザイナー自らが内幕を語った、画期的な本
近畿車輛のデザイナーであった著者による本。
鉄道ファンのうち多くの方は、車両のデザインに大きな興味を持っていることと思いますが、デザインの出来をああだこうだと語る人は数知れずとも、デザインを行う立場の方が語る情報はこれまで非常に限られていました。

近年では、水戸岡鋭治氏がデザインした車両については、内実が語られることが多くなりました。しかし水戸岡氏に依頼する鉄道会社の多くは、非日常性を求める車両のデザインを依頼するケースが多く(JR九州など例外もありますが)、ビジネスユース中心の長距離列車や、ごく普通の通勤電車などは、一体どういう意図で、どういうプロセスで、何に留意してデザインされるのか語られることは従来殆ど無く、画期的と言ってよい内容だと思います。
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【本の紹介】Das Berliner U- und S-Bahnnetz(ベルリンU・Sバーン路線図)

最初に申し上げておきますが、これからご紹介するのはベルリンの歴史的な鉄道路線図についての本です。
最新版の路線図については、公式サイトをご覧下さい。Sバーン(近郊電車)・Uバーン(地下鉄)いずれの公式サイトでも、鉄道路線図がご覧になれます。トップページからお探しの場合は、「Liniennetz」と書かれたところが路線図ページへのリンクになります。目的別に何種類かありますが、一般的な電車・地下鉄の路線図であれば以下のものがよいでしょう。
http://www.s-bahn-berlin.de/pdf/VBB-Liniennetz.PDF
また市内バスの路線図については、下記のページをご覧下さい。
http://www.fahrinfo-berlin.de/Fahrinfo/bin/query.bin/dn?ujm=1
なおこの地図は印刷に向いた形式(PDFなど)は提供されていません。どうしてもバス路線の入った紙の地図が欲しい場合は、現地で購入するか、またはBVGのオンラインショップから、紙の路線図(冊子タイプなら『Berlin Atlas und mehr』、一枚物なら『Berlin Liniennetz』)を注文するほかありません。

さて、上記のような最新版の路線図だけでは満足できないという、やや普通でない嗜好の方(例えば私とか)には、以下の本はいかがでしょう。


赤色基調の表紙は2007年版、緑色基調の表紙は2013年版です。

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【旅行ガイド】ワルシャワ 公共交通機関の利用ガイド

ワルシャワ市電の記事を連載してきたことからお分かりの通り、私は以前ワルシャワへ旅行し、公共交通機関に乗りまくりました。
ワルシャワの市内交通の利用方法についてはやや情報が少ないようですので、私の知る範囲で情報の調べ方をメモしておきます。

なお、以下の情報は2013年8月に執筆しました。ネット上の情報も2013年8月に調査しました。それ以降の変更は反映してありません
絶対に間違いがない情報でないと困る場合は、このブログを頼りにせずご自身でお調べ下さい。

また、ポーランド政府観光局のブログにも、乗り方について分かりやすくまとまった記事がありますので、併せてご覧下さい。ていうかあちらの方が分かりやすいと思います(笑)

●どんな交通手段があるの?
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【音】神奈川中央交通 メルセデスベンツ・シターロG / [Sound] Kanagawa Chuo Kotsu, Mercedes Citaro G

【音】メルセデス・シターロG 町13系統 <急行>町田バスセンター→山崎団地センター
[Sound] Mercedes Benz Citaro G , Line 町13 Machida Bus Center -> Yamazaki Danchi Center (Express)

山崎団地センターへ向かう連接バス A Citaro G goes to Yamazaki Danchi Center. A bus in left is conventional bus of Kanagawa Chuo Kotsu.

山崎団地センターへ向かう連接バス
A Citaro G goes to Yamazaki Danchi Center. A bus in left is conventional bus of Kanagawa Chuo Kotsu.

近年、ゆっくりながら日本でも導入が進んでいる連接バスですが、都内では初の導入事例となる町田市内の連接バスを録音しました。
町田といえば都内でも屈指のバス王国で、ツーステップ車が主力の頃は長尺車が多数投入され圧巻でしたが、近年は低床化・仕様標準化の流れから一般的なサイズの車両が中心となっており、連接バスは久々にバス王国の存在を強く感じさせる車両となりました。
導入されたのはドイツ・メルセデスベンツの「シターロ」Gタイプで、ドイツはじめオランダ、トルコ、ポーランド、イギリス、フランス、クロアチア、ハンガリーなど、きわめて広範囲に導入されている車両です。
日本で導入されているのは連接バスタイプの「G」のみですが、そのほかにも全長10.5mの一般的な単車タイプ、三連接(!)タイプ、単車ながら全長15mの三軸車など、様々なタイプが設定されています。
トランスミッションは欧州では一般的なオートマチックのまま(そもそもマニュアルトランスミッションは設定なし)輸入されており、日本の一般的なバスとは大きく異なるサウンドとなっています。
一方、当然のことながら車内放送は一般的な神奈中バスのものそのもので、聞き慣れた放送と特異なエンジン音とのギャップが面白いです。
収録は、休日昼間の山崎団地センター行きで行いました。当然のことながら連接バスのキャパシティをフル活用する乗客数ではありませんでしが、他路線を見送って「ご指名」での乗車と思しき一般客の姿も十数人あり、目立つ連接バスと急行運転が集客に貢献しているようでした。
週末の渋滞が激しい町田周辺ですが、この日もやはり道が混んでおり、所定では所要14分のところ、10分ほど余計にかかっています。

At 28 May 2012, the first articulated bus service in Tokyo was started at Machida city. Articulated bus isn’t strange in Europe and America. However, in Japan, maximum length of bus is limited to 12m, special permission is required for operation of articulated bus.
Machida city is one of commuter towns in Tokyo megalopolis. Population is approx. 400000. There are many housing complexes, but its are not close to railway station. About 60 bus lines are operated in the city. Due to many lines are overlapped in central area, operation interval is approx. 0-3 minuts in central area. But many lines are overcrowded in peak hours.
Buses are jammed in central Machida in morning peak hours due to buses are too many. The articulated bus is launched to solve the problem.
The articulated bus is operated as the express line from Machida bus center(Bus terminal near Machida station) to Yamazaki Danchi Center(Yamazaki Danchi is one of large housing complexes).
Operator is Kanagawa Chuo Kotsu. It’s second large bus operator in Japan.

【本の紹介】Atlas Linii Kolejowych Polski(ポーランド鉄道路線地図)

20130613_200636_ポーランド鉄道路線図(自宅)_01_●大ボリュームの鉄道地図
知られざる鉄道大国、ポーランドの鉄道路線を網羅した鉄道地図です。
基本的な内容としては、以前ご紹介した『Eisenbahnatlas Schweiz(スイス鉄道地図)』などと同じく、地図上に鉄道路線を描いてあるものですが、出版社が違うほか、本としてのボリュームは大違いで、厚みは3cmもあります。
どうしてこれほど違うのかといえば、もちろんポーランドの国土が広大であるというのが要因のひとつですが、それ以上に内容が盛り沢山であることが大きな要因です。

●鉄道地図だけではない、充実した内容
ポーランド全土の鉄道路線について、現役の国鉄線だけでなく、ナローゲージ鉄道や工場専用線、廃止路線まで描かれており、地図そのものも充実しています。そればかりでなく、全路線の開業年・廃止年・旅客営業休止年の表や、全駅名索引が掲載されています。
なかでも大きな特徴は、地図で描かれた地域の沿線風景・列車・駅舎の写真が掲載されていることで、地図1ページにつきほぼ写真1ページの割合となっています。鉄道地図を眺めていると、どうしても現地の風景や車両がどんなものか気になってきますが、本書ではわざわざ別の書籍やインターネットを参照しなくても、その場で見ることができます。
また後半には、ポーランドの鉄道信号について表示の意味が解説されているページもあります。ポーランドでは点滅信号が全面的に使われていたり、補助灯が重要な意味を持っていたりと、日本とは表示体系がまったく異なっていることが理解できます。本線の一般的な色灯式信号機だけでなく、腕木式信号機や入換信号まできちんと意味が解説されています。
さらに、優等列車の運行系統図、各路線を最高速度別に色分けした図など、付録的な図も多数収録されています。

なお、ほぼ全ての説明文や判例には英語が付されていますので、ポーランド語が読めなくても内容を理解することが可能です。

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【本の紹介】大分交通別大線(RMライブラリー)

かつて大分と別府を結んでいたインターアーバン、別大電車の本です。
沿線には温泉街あり、県都の繁華な市街地あり、車窓に別府湾が広がる海岸沿いの単線区間ありと、変化に富んだ車窓がある路線で、今でも残っていたらさぞかし楽しい路線だっただろうと思います。あいにく現役時代は知らない私ですが、本書には車両主体のものだけでなく沿線風景も取り入れた写真が多数掲載されており、沿線風景の多彩さは十分に伝わってきます。
また車両陣も個性的で、路面電車としては大柄な全長13m級の電車が日常的に連結運転を行っていたり、定員200人の永久連結車が走っていたり、また路面電車としてはきわめて珍しいM-M’ユニット車や、アルストム型台車を履いた車両があったりと、こちらもやはり、「今残っていたら……」という思いを抱かせるものです。車両は創業時からの全車種が網羅されており、形式写真も不鮮明なものはほとんどなく、全車種掲載されています。

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【音】ベルリン市電 タトラKT4D その2 / [Sound] Berlin tram, Tatra KT4D – Part 2

【音】タトラKT4D M5系統 Landsberger Allee/Petersburger Straße(ランズベルガー大通り・ペータースブルガー通り) → Judith-Auer-Straße(ユディスアウアー通り)
[Sound] Tatra KT4D , LineM5 Landsberger Allee/Petersburger Straße -> Judith-Auer-Straße

ベルリンの繁華街のひとつ、アレキサンダープラッツ駅前に停車中のKT4D A KT4D at Alexanderplatz.

ベルリンの繁華街のひとつ、アレキサンダープラッツ駅前に停車中のKT4D
A KT4D at Alexanderplatz.

前回、タトラKT4Dの足回り更新車の走行音をご紹介しましたが、こちらは未更新車の走行音になります。いずれもサイリスタチョッパ制御なのですが、走行音はまったく異なるものになっています。
前回ご紹介した走行音も、日本の電車にはない独特なものでしたが、こちらはさらに変わった、珍妙そのものといえる音になっています。
収録は2009年ですが、このときでもすでに大多数が足回りの更新を受けており、未更新車は非常に少数となっていました。
ちなみに、オリジナルの走行音がする車両でも、車内は更新を受けており、座席の交換や車内案内表示装置の設置などにより、原型のそっけない雰囲気は払拭され、現代的な水準になっていました。もちろん自動放送も設置されており、この録音でもお聞きいただけます。
収録は、ベルリンの中心部から旧東ベルリンの郊外へ向かう幹線、M5系統で行いました。M5系統のうち、5分ほどの区間をアップしています。M5系統はベルリン市電有数の幹線ながら、以前はKT4Dも頻繁に運行されていましたが、フレキシティ・ベルリンの投入は優先的に行われたようで、量産車投入が始まると、あっという間に見かける頻度が減ってしまいました。

2014年10月4日追記:『Tramways & Urban Transit』2014年9月号によると、足回り未更新車は7月4日をもって運用から退いたとのことです。最後の活躍の場は、住み慣れた大幹線M4系統でした。

This is sound of Tatra KT4D with original electric equipment. I recorded in 2009. As of 2009, most propulsion system of KT4D was modernised. KT4D with original sound was very few. This sound was recorded from Landsberger Allee/Petersburger Straße to Judith-Auer-Straße on route M5.

【音】ベルリン市電 タトラKT4D その1 / [Sound] Berlin tram, Tatra KT4D – Part 1

【音】タトラKT4D 61系統 Bellvuestraße(ベルビュー通り) →Bahnhofstraße/Lindenstraße(バーンホフ通り・リンデン通り)
[Sound] Tatra KT4D , Line 61 Bellvuestraße -> Bahnhofstraße/Lindenstraße

自然豊かな景観の中を走ることで有名な、69系統で運行中のKT4D。 A KT4D runs as route 69.

69系統で運行中のKT4D。同系統は自然豊かな景観の中を走ることで有名。
A KT4D runs as route 69.

ベルリン市電の一時代を代表した車両、タトラKT4Dの走行音です。
タトラKT4Dは、共産主義諸国に広く供給されたタトラカーの一族で、形式の末尾Dは東ドイツ向けを表します。最初に導入されたのはポツダム(1974年)で、ベルリンでは1976年から走り始め、500編成以上が導入されました。
他の共産主義諸国の都市では、1960年代からタトラT3(いわゆる「丸タトラ」)の導入が始まっていたのに対し、ベルリンでは四輪単車が主流で、おそらくタトラKT4Dの登場は革命的なものだったのではないでしょうか。
1990年の東西ドイツ統一以降、各都市ではタトラカーのリニューアルが進みましたが、ベルリンもその例に漏れず内装、足回りの改造を受けた車両が多くなっています。
ここでお聞きいただけるのは足回り改造後の車両で、チョッパ制御の「プー」という動作音と、「ムォーン」という独特のモーター音を発します。「トラムのひびき」サイト内ではポツダムのKT4Dの走行音を公開していますが、改造のメニューは都市によって異なることから、それとはまた異なった音になっています。収録はベルリン東部の郊外を走る61系統で行い、そのうち5分ほどの区間の録音です。
一時は一大勢力を誇ったKT4Dですが、いかに近代化改造を受けているとはいえ、高床であるというデメリットは如何ともしがたく、近年は置き換えが加速しています。2011年から、新型車「フレキシティ・ベルリン」の量産車投入(試作車投入は2008年)が始まっており、2017年までにKT4Dは営業運転から引退する予定になっています。

足回り更新前の車両の走行音はこちらでご紹介しています。

I recorded the sound of Tatra KT4D in Berlin. The car was modernised propulsion system. The sound from under the floor was different from original.
This sound was recorded from Bellvuestraße to Bahnhofstraße/Lindenstraße on route 61.

【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:PESA 120N/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : PESA 120N

Stare Miasto電停を発車する120Na / A 120Na leaves Stare Miasto stop.

Stare Miasto電停を発車する120Na / A 120Na leaves Stare Miasto stop.

ワルシャワ市電初の100%低床車です。
2007年に導入されたグループを120N、続いて2009年から導入されているグループを120Naと称します。120Naの中には、両運転台となっている車両があり、それは120NaDUOと呼ばれています。
いずれも全長約30mの5連接車で、メーカーはコンスタルからPESA(ペサ)になりました。

120N。120Naとは前面スタイル等が異なる。Most Poniatowskiegoにて。 / A 120N at Most Poniatowskiego.

120N。120Naとは前面スタイル等が異なる。Most Poniatowskiegoにて。 / A 120N at Most Poniatowskiego.

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【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:FPS 123N/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : FPS 123N

161914_ZTM(Most poniatowskiego)トリミングFPS 123N。Most Poniastowskiego電停付近にて。
A FPS 123N at Most Poniatowskiego.

 2006-2007年に導入された車両です。車体の全体的な形状やドア配置にはコンスタル105Naの面影があるように思えるのですが、あまりはっきりした情報がないものの、どうもコンスタル105Naの更新車ではなく、新造のようです。すでに部分低床車(コンスタル116N)も登場していた時期に、なぜ高床車を投入したのか、意図は謎ですが。
 製造を行ったのはH. Cegielski – Poznań社で、ワルシャワ市電へはこの形式のみ納入したメーカーです。以前は国鉄(PKP)向けの機関車なども納入していましたが、現在は産業用のエンジンなどの生産が中心のようです。
 外観はコンスタル105Nを近代化したようなイメージで、車内もオフホワイト基調の壁・天井に埋め込み型の明るい照明、布張りのシートなど大幅に進化しています。自動放送・車内案内表示装置もあるなど、床の高さ以外は現代的な水準となっています。
 制御方式はサイリスタチョッパ制御で、走行音はコンスタル105N2kとほぼ同じです。在籍数は30両にとどまっています。