【本の紹介】昭和時代の新京成電車(RMライブラリー)

現在の新京成電鉄は、インバーター制御のステンレスカーが多数在籍する近代的な車両陣となっていて、大手私鉄に比肩するものとなっていますが、昭和60年代までは吊り掛け車を8両も連ねたいささか垢抜けない色の列車が、モーター音も高らかに走っていました。
そして昭和20年代ともなれば、畑や雑木林の中を木造電車が走っているという、現在の姿からは想像もできない、とんでもない田舎電車だったようです。
本書では、そんな時代の新京成電鉄の吊り掛け電車を、ベテランファンが開業以来の全車種に渡って紹介しています。

800型・8000型あたりからの新京成の電車は、様々な文献で紹介されていますが、創業が新しい割には旧型電車を扱った文献は少なく(皆無ではないですが入手性に難があったり……)、網羅的に解説された本書はありがたい存在です。

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【本の紹介】URBAN RAIL DOWN UNDER(オセアニアの都市鉄道)

 ダウンアンダー、つまり(欧州から見た)地球の裏側、すなわちオーストラリアとニュージーランドの都市鉄道にスポットを当てた本です。
 前回ご紹介した本と同じロバート・シュヴァンドル氏によるもので、紹介されている都市はオーストラリアのパース、アデレード、メルボルン、シドニー、ブリスベン、ゴールドコーストと、ニュージーランドのオークランド、ウエリントン、クライストチャーチです。
 貨物はともかく旅客輸送の分野においては、鉄道が実用的な交通機関の体をなしていないイメージすらある両国ですが、特にオーストラリアにおいては都市鉄道が充実しており、またニュージーランドにおいても、都市交通として無視できない質と量で近距離鉄道が運行されていることが、本書によりわかります。

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【本の紹介】U-Bahn, S-Bahn & Tram in Berlin(ベルリンの地下鉄・近郊電車・市電)

 「Urban Rail in Germany’s capital city」との副題がある通り、ドイツの首都ベルリンにおける、地下鉄(Uバーン)・近郊電車(Sバーン)・市電(トラム)の路線・運行形態・歴史・車両を解説した本です。
 ベルリンと言えば、冷戦時代にはベルリンの壁により隔てられていた、世界にも例を見ない分断都市として有名です。そのため、旧西ベルリンと旧東ベルリンでは、市電の路線の密度が全く違ったりしています。またSバーンには、同時期に西と東で開発された別々の車種が、今は同じ線路の上を走っているといったこともあります。
 一方戦前のベルリンは、欧州有数の産業・文化都市としての繁栄を謳歌したことから、UバーンやSバーンは相当規模の路線網を擁していました。現在でも当時の意匠を残した駅施設を多く目にすることができます。
 このようにベルリンの鉄道にはいろいろ見所があり、書籍も多数発売されてきているのですが、いかんせんほとんどがドイツ語で、日本語話者には敷居の高いものでした。この本はドイツ語・英語の併記になっており、英語テキストの方では難解な言い回しもあまり使われていないので、比較的内容を理解しやすいです。

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