【本の紹介】URBAN RAIL DOWN UNDER(オセアニアの都市鉄道)

 ダウンアンダー、つまり(欧州から見た)地球の裏側、すなわちオーストラリアとニュージーランドの都市鉄道にスポットを当てた本です。
 前回ご紹介した本と同じロバート・シュヴァンドル氏によるもので、紹介されている都市はオーストラリアのパース、アデレード、メルボルン、シドニー、ブリスベン、ゴールドコーストと、ニュージーランドのオークランド、ウエリントン、クライストチャーチです。
 貨物はともかく旅客輸送の分野においては、鉄道が実用的な交通機関の体をなしていないイメージすらある両国ですが、特にオーストラリアにおいては都市鉄道が充実しており、またニュージーランドにおいても、都市交通として無視できない質と量で近距離鉄道が運行されていることが、本書によりわかります。


 構成は、各都市ごとに都市交通の状況の概説と歴史があり、さらに一般鉄道については各路線ごとに運行形態・歴史の解説があります。路面電車については、システム全体についての運行形態・歴史の解説がされています。最後は現有車両について形式ごとに説明されています。各都市とも、路線網を完全網羅した正縮尺の地図がついています。
 見どころはシドニーの広大な郊外電車網、それからメルボルンの世界最大級と言われる路面電車ネットワークでしょうか。
 なかでも路面電車好きとしては、メルボルン市電の記述・写真は興味深いものです。日本では、戦前製の旧型電車で運行されるシティサークルトラム、それからレストラントラムが比較的知られている程度ですが、本書ではそれらはもちろんのこと、郊外鉄道線を市電路線に転換したところや、郊外鉄道との平面交差など、趣味的に興味深いものが多数掲載されています。
 緻密でなおかつ広範囲なネットワークを表現するため、地図は縮尺違いで3枚も用意されています。郊外電車は全駅名と運行系統が描かれている一方、さすがに路面電車は主要電停名と運行系統がわかる範囲の情報量となってはいますが、中心市街地全域が市電の線路だらけである一方、相当郊外まで路線が延びている様子は圧巻です。
 また軌道系の交通機関以外にも、アデレードのガイドウェイバス、ウエリントンのトロリーバスなど、何らかの走行路のインフラを持つバスも扱われており、バラエティに富んだ都市交通の姿が堪能できます。
 さらに趣味者にとって嬉しいのは、各地の路面電車博物館や保存鉄道についても記載されているところでしょう。彼の地ではただ電車を保存するだけでなく、実際に走れるようにしてある博物館が多いようで、戦前製の旧型電車がポールを上げ、ヘッドライトを灯している写真が多数掲載されているのを見ると、羨ましい気持ちにならざるを得ません。
※本書には邦題はありません。『オセアニアの都市鉄道』とは、理解しやすいよう便宜的に表記したものです。

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