【ご案内】コミックマーケット94(2018夏)同人誌頒布いたします

『ウッヂの市電とインターアーバン』表紙

ブログには書いていなかったのですが、2017年にポーランド・ウッヂ市電を訪問しました。単線路側軌道が延々続くインターアーバンや、バラエティ豊かな車両陣が面白かったので、ウッヂ市電のことを本にまとめました。2018年夏のコミックマーケットにて頒布いたしますので、ぜひお買い求めください。

●タイトル
『ウッヂの市電とインターアーバン』

●頒布日時と場所
(2018/8/26追記)メロンブックスにて通信販売の取り扱いを開始しました。コミックマーケットで買いそびれた方、ぜひご利用ください。

東京ビッグサイトで開催される、コミックマーケット94の3日目(2018年8月12日)東地区P-13a「インフラ研究会」様ブースにて委託頒布いたします。

●体裁
B5判フルカラー、本文44ページ

●価格
1冊につき1000円(メロンブックス通販では、販売店マージンがあるため価格は異なります。ご理解をお願いします)

●内容
カラーグラフ(沿線風景)
路線図
歴史
路線概況と運行
乗車券
現有車両
過去の車両(戦後の代表車種のみです)
車庫
博物館

またおまけで、ウッヂ市バスの概要、ポーランドにおけるウッヂ以外の市電についても触れています。
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【本の紹介】ATLAS PRZEWOŹNIKÓW KOLEJOWYCH POLSKI 2011(ポーランド鉄道事業者図鑑)

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●全鉄道事業者を平易な英語で紹介
ポーランドにおける鉄道事業者の全てを、社名のABC順に紹介した本。
ポーランド語・英語が同ボリュームで併記されており、また英語の文章はきわめて平易に書かれていますので、高校生レベルの英語力で十分に読解可能です(流石に鉄道用語だけは高校生レベルではないですが)。

●オープンアクセスによる新規事業者を含め、数々の鉄道事業者を漏れなく取り上げる
ポーランドで鉄道事業者というとまずはPKP(Polskie Koleje Państwowe – 直訳するとポーランド鉄道公社ですが、ガイドブックなどではポーランド国鉄と書かれることが多いようです)が思い浮かびますが、その他にKM(Kolej Masowiecki)やKD(Koleje Dolnośląskie)など、地方ごとのローカル列車を担当する事業者も漏れなく掲載されています(ちなみにKMはワルシャワ周辺、KDはブロツワフ周辺を運行しています)。
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しかし本書では、そういった旅客鉄道事業者をはるかにしのぐ数の貨物鉄道事業者が掲載されています。
PKPの部門であるPKP Cargoも大手事業者として君臨しているものの、それ以外の事業者も数々存在しています。それらは殆どがここ20年ほどの間に営業を開始したものと書かれており、オープンアクセス政策の結果が貨物部門ではより顕著に出ていることが実感できます。
なお、都市交通(地下鉄・市電など)のみを運行する事業者は、本書では取り上げられていませんので念のため。
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【車両紹介】ポーランド国鉄 EN57型のバラエティ/ Variety of PKP EN57

【車両紹介】ポーランド国鉄 EN57型のバラエティ/ Variety of PKP EN57
EN57は、1961年から約30年にわたり実に1412編成が製造された、ポーランド国鉄を代表する電車です。大都市の近郊電車から中長距離のインターレギオ(日本で言う快速に相当しますが、イメージ的には急行東海や大垣夜行クラスの距離を走る列車をイメージしていただいたほうが適切でしょう。客車による運行も多いです)まで幅広く使われています。その姿は東京・大阪近郊の普通から所謂「遜色急行」まで使われた国鉄近郊型電車を彷彿とさせます。
全編成ともTc-M-Tcの三両固定編成で、吊り掛け駆動となっており、重厚な走行音を奏でます(走行音は「トラムのひびき」サイト内でお聞きいただけます)。

EN57はもともと両数が多い上、1989年の東欧革命以後は生活・技術水準や競合交通機関などの状況が激変し、鉄道の経営形態にも大きな変化があったため、その変化に応じて多種多様なバリエーションが生まれています。塗装変更や内装のリニューアルを行った車両から、冷房化・インバーター制御化といった抜本的な更新を行った車両まで登場しており、趣味的に非常に興味深い状態になっています。
2011年1月・2011年7月にポーランドを訪問した際、多様なEN57の写真を多く撮影しました。もちろん、全てのバリエーションを網羅するには至っていませんが、その片鱗をお楽しみいただければ幸いです。

PKP EN57 is most majour EMU in Poland. EN57 was built 1412 units from 1961 to 1993. Today, EN57 has many varieties of liveries, electric equipments and interieurs by modernization or color changing. It’s very interesting for railway enthusiasts.
I visited Poland in Janualy 2011 and July 2011. I could take many pictures of EN57. You can see the variety of EN57 by following pictures.

もっとも典型的なEN57。この塗装がPKPの標準色です。ほとんどのEN57は、このように行先表示がLEDに換装されています。[Kraków Główny:クラクフ中央駅] / EN57 with standard PKP livery. Destination sign was changed to LED sign. [Kraków Główny]

もっとも典型的なEN57。この塗装がPKPの標準色です。ほとんどのEN57は、このように行先表示がLEDに換装されています。[Kraków Główny:クラクフ中央駅] / EN57 with standard PKP livery. Destination sign was changed to LED sign. [Kraków Główny]

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【本の紹介】世界の路面電車ビジュアル図鑑

●世界中を網羅した驚くべきボリューム
まさに圧倒的なボリュームの本です。世界50カ国400以上の都市の路面電車を紹介するという、おそらくは前代未聞と思われる企画で、これを筆者一人で訪問したというのですから驚くほかありません。
日本で紹介される海外の路面電車というと、LRT先進地域というべき西欧や北アメリカか、日本人でも身近な中国などの電車が多いですが、本書はそれらの国々は当然のこと、旧ソ連やトルコ、中東欧など、馴染みの薄い国々の路面電車も扱われています。
ロシアのマイナー都市や、ウクライナ、ブルガリア、カザフスタンなど、和書はもちろんネット上でも情報の少ない国・都市の電車が多数登場しており(流石に北朝鮮は扱われていませんが……)、これだけ情報の入手が容易になった昨今でも、まだまだ知らない電車がこんなにあるのか!と新鮮な気持ちにさせられます。
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【旅行ガイド】ワルシャワ 公共交通機関の利用ガイド

ワルシャワ市電の記事を連載してきたことからお分かりの通り、私は以前ワルシャワへ旅行し、公共交通機関に乗りまくりました。
ワルシャワの市内交通の利用方法についてはやや情報が少ないようですので、私の知る範囲で情報の調べ方をメモしておきます。

なお、以下の情報は2013年8月に執筆しました。ネット上の情報も2013年8月に調査しました。それ以降の変更は反映してありません
絶対に間違いがない情報でないと困る場合は、このブログを頼りにせずご自身でお調べ下さい。

また、ポーランド政府観光局のブログにも、乗り方について分かりやすくまとまった記事がありますので、併せてご覧下さい。ていうかあちらの方が分かりやすいと思います(笑)

●どんな交通手段があるの?
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【本の紹介】Atlas Linii Kolejowych Polski(ポーランド鉄道路線地図)

20130613_200636_ポーランド鉄道路線図(自宅)_01_●大ボリュームの鉄道地図
知られざる鉄道大国、ポーランドの鉄道路線を網羅した鉄道地図です。
基本的な内容としては、以前ご紹介した『Eisenbahnatlas Schweiz(スイス鉄道地図)』などと同じく、地図上に鉄道路線を描いてあるものですが、出版社が違うほか、本としてのボリュームは大違いで、厚みは3cmもあります。
どうしてこれほど違うのかといえば、もちろんポーランドの国土が広大であるというのが要因のひとつですが、それ以上に内容が盛り沢山であることが大きな要因です。

●鉄道地図だけではない、充実した内容
ポーランド全土の鉄道路線について、現役の国鉄線だけでなく、ナローゲージ鉄道や工場専用線、廃止路線まで描かれており、地図そのものも充実しています。そればかりでなく、全路線の開業年・廃止年・旅客営業休止年の表や、全駅名索引が掲載されています。
なかでも大きな特徴は、地図で描かれた地域の沿線風景・列車・駅舎の写真が掲載されていることで、地図1ページにつきほぼ写真1ページの割合となっています。鉄道地図を眺めていると、どうしても現地の風景や車両がどんなものか気になってきますが、本書ではわざわざ別の書籍やインターネットを参照しなくても、その場で見ることができます。
また後半には、ポーランドの鉄道信号について表示の意味が解説されているページもあります。ポーランドでは点滅信号が全面的に使われていたり、補助灯が重要な意味を持っていたりと、日本とは表示体系がまったく異なっていることが理解できます。本線の一般的な色灯式信号機だけでなく、腕木式信号機や入換信号まできちんと意味が解説されています。
さらに、優等列車の運行系統図、各路線を最高速度別に色分けした図など、付録的な図も多数収録されています。

なお、ほぼ全ての説明文や判例には英語が付されていますので、ポーランド語が読めなくても内容を理解することが可能です。

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【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:FPS 123N/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : FPS 123N

161914_ZTM(Most poniatowskiego)トリミングFPS 123N。Most Poniastowskiego電停付近にて。
A FPS 123N at Most Poniatowskiego.

 2006-2007年に導入された車両です。車体の全体的な形状やドア配置にはコンスタル105Naの面影があるように思えるのですが、あまりはっきりした情報がないものの、どうもコンスタル105Naの更新車ではなく、新造のようです。すでに部分低床車(コンスタル116N)も登場していた時期に、なぜ高床車を投入したのか、意図は謎ですが。
 製造を行ったのはH. Cegielski – Poznań社で、ワルシャワ市電へはこの形式のみ納入したメーカーです。以前は国鉄(PKP)向けの機関車なども納入していましたが、現在は産業用のエンジンなどの生産が中心のようです。
 外観はコンスタル105Nを近代化したようなイメージで、車内もオフホワイト基調の壁・天井に埋め込み型の明るい照明、布張りのシートなど大幅に進化しています。自動放送・車内案内表示装置もあるなど、床の高さ以外は現代的な水準となっています。
 制御方式はサイリスタチョッパ制御で、走行音はコンスタル105N2kとほぼ同じです。在籍数は30両にとどまっています。

【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:コンスタル116N/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : Konstal 116N

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コンスタル116Na。Most Poniatowskiegoにて。
A Konstal 116Na at Most Poniatowskiego.

1998年から製造された部分低床車。日本では部分低床車の評判はいまいちですが、ワルシャワ市電は信用乗車方式となっており、運賃支払いのため車内を移動する必要がないので、部分低床車でも十分に機能を果たしています。
116Nは、その中でさらに116Nと116Naに形式が分かれており、116Naは116Nに比べるとモーター出力がアップしている(50kW×4から75kW×4へ)ことや、誘導電動機を採用していることが相違点です。在籍車のほとんどは116Naで、116Nは1編成のみです。
全長24mの3連接車で、この後導入されたPESA 120Nが30m級なのに比べるとやや小型ですが、複数編成を連結しての運転は行っていません。
この形式の前には、112Nという全長20mの2連接車も製造されましたが、1編成のみの導入にとどまっていますので、試験的な存在のようです。

最前部と最後部の台車、計4軸が駆動軸となっています。2000年までに約30編成が導入されており、訪問時は目抜き通りであるイェロゾリムスキェ通りを通る路線を中心に運用されていました。

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【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:コンスタル105Na/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : Konstal 105Na

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コンスタル105Na。ヘッドライトケースは原型の四角いもの。ドアの下半分には窓がない。現地ファンサイトによると、これはどうも後天的な改造によるものの模様。
A 105Na with square headlight.

ワルシャワ市電の最大勢力です。
いわゆる「角タトラ」(タトラT5・T6シリーズ)に酷似した外観ですが、ポーランドの国産車となっています。1979年から1992年までの長きにわたって、約2000両(メーターゲージ路線向けの、805Na型も含んだ数)が生産され、ポーランドのほとんどの市電において、その姿を多数目にすることができます。
この車種は、前回ご紹介した13Nを基本として、電機品の改良・車体デザインの変更を行ったものです。特に車体では、デザインの変更とともにドア数の増加が印象的です。客用扉は4扉となり、一面ドアだらけといった風情の外観になっています。また13Nのドアが4枚折戸だったのに対し、105Naはグライトスライド扉となっています。
車内は一人掛けの前向きシートが並び、天井には直方体のカバーに覆われた蛍光灯が並びます。13Nと同じく実用一点張りで全く飾り気のないデザインです。

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105Naの車内。下回りの更新を受けた「105N1k」と称するタイプのもので、車内はあまり手を加えられていないが、電光案内装置の設置が行われている。
Interior of 105Na. Passenger information display is added.

13Nがもっぱら2両連結で運行されているのに対し、105Naは休日などに一部の系統で単車運転が行われています。ワルシャワでは、市電の路線のあるところどこでも見かけることができました。
 コンスタル105Naはなにしろ両数が多いうえ、共産主義政権の崩壊後、経済環境やら技術水準やら生活水準やらが激変したこともあって、多種多様なバリエーションが生じていおり、趣味的にも大変興味深いものとなっています。
 その全容を短い滞在で把握することは出来ませんでしたが、以下にバリエーションの数々をご紹介します。

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【車両紹介】ワルシャワ市電の車両たち2011:コンスタル13N/ Rolling stock of Warsaw tram in 2011 : Konstal 13N

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コンスタル13N。ヘッドライトが角形のものに換装されている。Stare Miasto電停にて。
Konstal 13N at Stare Miasto. Headlight was changed to square lamp.

1959年から製造された車両で、アメリカで生まれたPCCカーの流れを汲む、高性能路面電車初期の車両です。これまでの車両は、戦前からの延長線上にある吊り掛け駆動の四輪単車で、電動車が1~数両のトレーラーを牽くスタイルだったのに対し、コンスタル13Nではカルダン駆動で大型車体のボギー車と、格段に近代化がなされました。
四輪単車では、モーターが60kW程度×2の電動車がトレーラーまで牽引していたのに対し、コンスタル13Nでは41.5kW×4で、しかもトレーラーはなく連結運転時も全電動車編成となりますので、性能面でも大きく向上しています。実際乗車してみるとたいへんな高加減速車で、立っている時は手すりに掴まらないと確実によろけてしまうほどでした。

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コンスタル13Nの後部。先頭部とはかなり印象が異なる造形。Rondo ONZにて。
A tail of Konstal 13N at Rondo ONZ.

チェコスロバキアで生産された、所謂「タトラカー」の元祖であるタトラT1型と類似した車両です。タトラT1は2両だけがワルシャワにも投入され、1956年から1968年まで使用されました。ポーランドの他都市でも、同世代の車両は2011年時点でほぼ淘汰されており、まとまった数で残っていたワルシャワは珍しい存在です。
ちなみにワルシャワ以外の都市では、単車タイプの13Nではなく、2両連接車タイプのコンスタル102N・102Naが多く投入されていました。
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