2日目は朝6時前に起床、宿の朝食は権利放棄し、さらに今夜の宿泊も権利放棄して、長春市電へ乗りに行きます。
昨日と同じく開発区行のバスで1時間弱かけて大連北駅へ。やはりバス停以外から乗る人がいますが、乗ってくる地点は昨日と似通っており、どうやら「闇バス停」的なものになっているようです。
ともあれ、下見のおかげで不安もなく大連北駅に到着。何の注意喚起もなくマンホールの穴がぽっかり開いている(中国では時々マンホールの蓋が盗まれるらしいですね)ことにビビりつつ、駅に入ります。
コンコースでは、事前情報通り手荷物検査が。ホームへ降りる階段には「改札は発車3分前で打ち切る」との電光掲示が出ています。市街からの遠さといい、乗るまでの手順といい、電車というよりは飛行機に乗るような感じです。
コンコースの上階は、吹き抜けを囲むように店舗スペースが並んでいます。念のため1時間弱早めに着いたので、ここのファストフードで水餃子の朝食。この店のお客さんは10人弱と閑散としており、また周りにはまだ空いたままの店舗スペースも半分くらいあり、そのうえ駅全体がだだっ広いのが閑散とした印象に拍車をかけていますが、高速鉄道の利用者が増えてくれば賑やかになっていくことでしょう。
発車の10分ほど前から改札が始まり、ホームに降りると停まっていたのはICE3の兄弟車であるCRH3です。人生初の海外旅行でICE3に乗っただけに、乗れるのはちょっと嬉しい車両です。
外観もそうなら車内もまた、座席以外はICE3そのもので、荷棚に組み込まれた間接照明、ガラス張りのデッキ扉、鏡面仕上げの車内案内表示機など、ドイツデザインが随所に見られます。
指定された一等車の席に行くと他のお客さんが座っていましたが、英語でやり取りできて無事解決しました。これまで、駅の窓口といい銀行といい飲食店といい、ことごとく外国語は通じませんでしたが、高速鉄道の一等車(在来線の最下等車と比べると倍どころではない料金の開きがあります)に乗るような人は、それなりの教育水準の人である、ということなのでしょう。
発車後の席の埋まり具合は半分ほどです。走行音も乗客も静かで、快適な車内環境です。騒音も揺れがあまりに少なすぎて、うっかりすると「遅いな」と思ってしまうほど。
途中、小駅を通過していきますが、どの駅も田園地帯の真ん中にぽつんと駅がある状態で、くりこま高原や安中榛名といい勝負、いやそれ以上です。大連北駅と同じく、市街からの交通は不便そうです。
しかし中国東北部最大の大都市、瀋陽北駅は市街が駅付近まで到達しており、また乗客もずいぶん乗ってきて満席になりました。ホームにずらりと乗客が並ぶ様は、日本の新幹線さながらです。
大連から約4時間、お昼前に長春西駅に到着です。長春も結構大きな都市の筈ですが、駅の周りには建物はほとんどなく、駅の巨大さだけが目立ちます。
ここからはバスが6路線あり、事前の調べによれば173路が路面電車の電停を通るはずです。が、いざバスターミナルに立ってみれば、標識にあるのは150B路、159路、139路の3路線だけ。
しょうがないので、標識によれば長春駅北口まで行くことになっている139路にとりあえず乗ります。が、最初の停留所に着くと誰も降りないはずなのにドアを開けて停まったままになりました。他のお客さんは運転手になにやら質問して、返事を聞くと全員(といっても3人)降りていきます。
しょうがないので自分もそれについていくと、後ろに停まっているバスにみんな乗り換えていきます。ここのバス停が市街の端で、どうやら長春西駅からここまではお客さんが少ないため、系統分割している、ということのようです。
なにやら長春に着くやいなやバスに振り回されている感がありますが、まあ先進国でなければこんなもんでしょう。日本でも、地方に行くと結構一見の客には手強いバスが散見されますし。
1時間弱乗っていると、左手にライトレール(軽軌)の線路が並行するようになりました。軽軌は市電への乗換駅を通りますので、駅が見えたところで乗り換えます。筆談できっぷ(片道券でもICカードでした)を買って、市電との乗換駅寛平大橋まで。
日本を発つ前に市電について調べていると、「12月中旬まで線路工事のため運休」という記事がいくつかヒットしたので、果たして本当に走っているかなーと思いながら降りたのですが……
来ました!
早速乗って、沿線を撮り歩きます。
車庫も入口からちらりとのぞき見。大連の中古車が多数を占める中、長春オリジナル車が奥に停まっていました。
途中下車しつつ、中心市街地とは逆側の終点、西安大路に到着です。露店が出ていたりして、庶民的な雰囲気の終点です。
あとは夕方まで、電車の録音をして過ごします。その成果はこちらでご覧いただけるとおりです。
録音を終えたら、都心側の終点工農大路からバスで長春駅へ。
20:53に出る夜行列車で大連へ戻ります。昨日大連駅で手に入れたきっぷは硬臥(3段寝台)の下段です。
本当は軟臥(2段寝台)がよかったのですが。というのも、軟臥だと専用待合室(軟座候車室)が使えるので、人混みと混沌と喧噪が支配すると噂の一般待合室を避けられるからです。
しかし実際のところは、駅に軟座候車室などというものはありませんでした。
ガイドブックの情報によると、一部の列車は長春駅から400mほど離れた長白路臨時駅なる場所から発車するとのことで、手中の切符にはばっちり「候車地点:長白路」と書いてあります。そしていざ行ってみると、ご覧の通りのプレハブ風情。当然待合室はひとつでした。
というわけでさすがに臨時駅にまで軟座候車室は無いようですが、普通の待合室内も「混沌と喧噪」と言うほどではなく、結果的には問題なしでした。夜行列車を待つ人は、東京と変わらぬ格好の若者から、浮浪者一歩手前に見える老婆まで様々で、これはこれで興味深いものがあります。
発車15分前に改札が開き、ホームへ進みますが、途中構内踏切があったり、屋根はごく簡素な短いものだったりと、このへんも臨時ホームらしいものです。
列車は無骨な機関車に牽かれ、オレンジ色の客車を連ねた長大編成。車内に入るとずらりと三段ベッドが並び、静かに発車すると長々と車内放送が始まります。向かいのベッドのお客さんは、商用とおぼしきワイシャツ姿の静かな中年男性で、同席相手としてはなかなかに運がいいです。
おかげで、日本では滅多に味わえなくなった、全盛期の寝台列車の雰囲気をゆっくり楽しみながら眠りに入れました。