ワルシャワ

 ヨーロッパ大陸諸国で鉄道王国と言えばまずは独仏が思い浮かびますが、実はポーランドも隠れた鉄道王国のひとつです。幹線鉄道の総延長(約20000km)は日本のJR総延長とほぼ同じで、また路面電車も15の路線網があり、中には世界最大級の路線網(シレジア・インターアーバン)も含みます。
 首都ワルシャワにも、総延長120km(ポーランド国内では第二位)にもなる路面電車の路線網があります。120kmと言ってもピンと来ないかもしれませんが、広島電鉄の3.5倍と言えば実感が持ちやすいでしょうか。
 共産主義時代はもちろん、自家用車の所有が自由化された現在においても、路面電車は引き続きワルシャワの重要な交通手段です。中心部だけでなく、市街地が途切れるあたりまで路線が乗り入れており、まさに市内どこにでも市電が走っている状態です。また本数も非常に多く、中心部ではラッシュ時に電車の渋滞が生じる(2010年の滞在時には9本連なっているのを見かけました)ほどです。
 また利用者も多く都心部は常に立ち客がいる状態で、車両はすべて連結車か連接車(休日は一部単車運転が入りますが)となっており、次から次へと電車が到着し、多数の乗客が一気に乗り降りしていく姿は、日本ではあまり見られない活気あるものです。
 車両陣は、共産主義時代の水準を脱却し西欧へキャッチアップを図るべく変化の最中にあり、旧型電車を淘汰すべく超低床車の大量投入が続く一方で、比較的新しい車両はリニューアルを受けて多種多様なバリエーションを生じています。また超低床車はポーランド国産のもので、コンビーノやシタディス、フレキシティが席巻する他国とは一味違い、趣味的にもなかなか楽しめる状態となっています。

Warszawa(Warsaw) is the Polish capital city with large tramway network.
Warszawa tram has 120km tracks, 800 cars and 30 lines. Tram is the most important tranport in Warszawa.
After 1990s, modernization of tram was started. Especially, since 2000s, much investment to tram was started. Passenger information system at tram stop and many low-floor trams are introduced.
Tram in warszawa is going to high quality transport.





PESA「SWING」120Na型。
(Stare Miasto:スタレ・ミアスト)

A PESA "SWING" 120Na
at Stare Miasto.

走行音【走行音】PESA「SWING」120Na 8系統 Osiedle Gorczewska(オシェドレ・ゴルチェフスカ)→Wojnicka(ヴォイニツカ)

PESA "SWING" 120Na, line8 Osiedle Gorczewska -> Wojnicka
"SWING" is polish-made 100% low-floor tram. In Warszawa, many SWING are introduced since 2007 for replacement of communist-era cars. Line8 is East-West line via Dworzec Centralny(Central station) and City center. Main route of line 8 is from Osiedle Gorczewska to Wiatraczna. But some trains terminate at Wojnicka for enterning to Praga depot.

Jan.2011
 ポーランド国産の100%超低床車、PESA製「SWING」の録音です。ポーランド産の電車というと日本では馴染みがないものですが、乗客として乗る分には欧州ビッグスリー(シーメンス・ボンバルディア・アルストム)の超低床車と全く遜色なく、快適な移動ができる車両に仕上がっています。
 走行音は比較的静かですが、起動・停止時に頻繁に変調音が聞こえるのが特徴で、ビッグスリーの各車両では聞かれない音になっています。
 共産主義時代の電車では車内放送がないことが多いポーランドですが、近年の欧州の流れに合わせ、SWINGでは車内放送が行われており、この録音でもポーランド語の車内放送がしっかり収録されています
 録音した8系統は、市街を東西に貫く路線で、両端の終点は郊外の地味なエリアですが、途中にはワルシャワ蜂起博物館(Muzeum Powstania Warszawskiego:ムゼウム・ポフスタニア・ヴァルシャフスキエゴ)や、ワルシャワ中央駅(Dworzec Centralny:ドヴォルジェッツ・ツェントラルナ)などがあり、地元民でなくとも縁のありそうな路線です。
 録音は、夕ラッシュ終了後の東行電車で行いました。本来、8系統の東の終点はWojnicka(ヴォイニツカ)ではなくWiatraczna(ヴィアトラチュナ)ですが、録音した便は出入庫路線のため、途中で枝分かれして車庫へ向かう経路をとっています。Wojnickaの一つ前にはZajednia Praga(ザイェトニャ・プラガ:プラガ車庫)というズバリな名称の電停もあるのですが、この車庫は2か所の電停から出入庫線が出ており、乗車した便は車庫前の電停ではなく一つ先のWojnickaから車庫に入る経路をとっていました。
 ちなみに録音時は、乗り込む際に系統番号は見たものの、うっかりしたことに行先表示はよく確認しておらず、終点で運転士から降車を促されて初めて気付いたのでした。そのため録音の最後に「コーニェッツ、コーニェッツ プラガ(Koniec, koniec Praga:終点、終点プラガです)」と声をかけられているところが入っています。



ヴィスワ川を渡り都心へ向かう
コンスタル105N2k型。
(Most Poniatowskiego:
モスト・ポニャトフスキエゴ)

A Konstal105N2k goes
to city center. Taken at
Most Poniatowskiego.

走行音【走行音】Konstal105N2k 8系統 Osiedle Gorczewska(オシェドレ・ゴルチェフスカ)→Wiatraczna(ヴィアトラチュナ)

Konstal105N2k, line8 Osiedle Gorczewska -> Wiatraczna
Konstal 105N2k is one of variation of Konstal 105Na. Konstal 105Na is made in communist era. Many 105Na are used in most polish cities. 105N2k is modernized type of 105Na. Propulsion sytem, doors and distination indicator are modernised.

Jan.2011
 上の「SWING」と同じく8系統を、共産主義時代につくられたKonstal105N2k型で収録しました。この105N2k型は、ポーランドの標準型路面電車ともいうべき105Na型をリニューアルしたものです。外観はタトラカーとよく似ていますが、ポーランド国内のKonstal(コンスタル)社で製造されました。
 105Na型の実用一点張りの角ばった外観と、全く飾り気のない簡素な車内は、いかにも共産主義国の電車といった印象ですが、民主化後はこの105N2k型のようにリニューアルを受けた車両も増えています。
 105N2k型は、105Na型の電機品を更新したもので、あわせてドアを一つ埋め3扉車(更新前が4扉車というのも、ドアだらけといった感じでなかなか凄まじいですが……)になり、LED行先表示・自動放送を搭載しています。
 電機品の換装によってサイリスタチョッパ制御となり、走行音はオリジナルと異なったものになっています。特に減速時の音が独特で、言葉では何とも表現しづらい、日本では全く類例のない音になっています。車内放送は上で取り上げたSWINGと同じ男声のものですが、こちらはアクセントが若干異なり、また冒頭にチャイムが入るものになっています(ちなみにSWINGも後期に導入された車両はこれと同じ放送になっています)。


 なお、ワルシャワ市電の車両についてはブログでも解説しておりますので、是非ご覧下さい。


まちのひびき



ワルシャワ・スタディオン駅
に停車中のEN57。
前面デザイン・車内設備
の更新車。

Modernised EN57 train
at Warszawa Stadion.

走行音EN57型 SKM S2系統 Sulejówek Miłosna(スレヨヴェック・ミウォスナ)→Warszawa Zachodnia(ワルシャワ・ザホドニア)

Class EN57, SKM line S2 Sulejówek Miłosna -> Warszawa Zahodnia
EN57 is most majour Polish EMU. About 4000 cars were made in 1961 - 1993. SKM is suburban railway service like the german S-Bahn. As of 2011, SKM line S2 was Sulejówek Miłosna - Warsawa Zachodnia(Warsaw West) line with some EN57s and another new EMUs. From 2012, S2 trains terminate at Lotnisco Chopina(Chopin Airport). All EN57s were replaced from SKM service.

Jan. 2011
 ポーランドを代表する電車と言えるのが、このEN57型です。1961年から1993年までに約4000両が生産され、ポーランドではどこでも見ることのできる存在です。用途としては日本の近郊型電車にあたるもので、車内にはボックス席が並び、外観は日本の電車を見慣れた目には親しみを感じられるもので、「ポーランドの113/115系」と言って良さそうに思います。
 近年は共産主義時代のサービス水準を脱却すべく、リニューアルを受けた車両が増えていますが、リニューアルのメニューは大小様々(「小」は座席の改良から、「大」はインバータ制御化・冷房化・前面デザイン変更まで)で、その結果多種多様なバリエーションを生じています。
 EN57が音鉄の面で魅力的なのは、吊り掛け駆動となっていることで、本線用大型吊り掛け電車ならではの重々しいモーター音を聴くことができます。録音した車両は、前面・接客設備がリニューアルされ、自動放送が設備されており、近代的な前面デザイン・明るい車内でありながら、吊り掛けサウンドはそのままという点が面白いです。
 収録したのは、SKMという近郊電車で、日本における国電、ドイツにおけるSバーンのように都市内輸送を主な目的とするサービスです。このような都市鉄道は、幹線鉄道とは独立した線路を有するケースが多いのに対し、ワルシャワでは中長距離の列車と同じ線路を共用(都心部は中距離電車と共用、郊外部は長距離列車・中距離電車と共用)しています。
 2012年よりSKMは空港への乗り入れを行い、EN57も新型車に置き換えられていますが、収録はその前年に行いました。収録したS2系統も、2012年より空港発着となっていますが、収録当時はワルシャワ西(Warszawa Zahodnia)駅の発着でした。
 収録時の車内は概ね静かな状態を保っており、吊り掛けモーターの音をたっぷりとお楽しみいただけます。
 

本頁トップ画像:ワルシャワ王宮の脇で電停に停まるSWING。ワルシャワの代表的観光地、旧市街もすぐそばである。(Stare Miasto:スタレ・ミアスト)

Image on top : A SWING stops at Stare Miasto(Old Town) stop. Building in the left of the road is one of Royal Castle buildings.